カタチのないセカイの為に
理子は、やっと果たせた仮を、
返せた気がした。

『あの時、
会いに行けなくなってしまった仮を…』


美咲は、
友達認識のある『忠君』以外の男性と、
たった一言だけど
久しぶりに話をしたのだった。

男性に話しかけられると、怒り口調になってしまう。
『ある時』を栄えに、男の人が嫌いになった。そして、『去年』を栄えに、男の人に話しかけられると、怒り口調になってしまったのである。
大抵の男達は、『なんだこの女』と言った感じで、相手にされないか、『ヒートアップ』して喧嘩になるかのどちらかだったから…。

そんな美咲に優潤は、
4月の入学式に、声を掛けた事がある。
元気一杯な笑顔と声を掛けたつもりだったのに、
その時のたった一言で、
優潤は、ショックの余りに『青ざめ』
後に、『3日間学校を休んだ事』なんて知るはずもなかった…。



優潤と健吾は、ご飯を食べ終えると、立ち上がった。
そして、店長に
「珠子さん。ご馳走様ー。」とお礼を言った。
食器を持つと、優潤は美咲に、


今までに誰も見た事の無い、最高な笑顔を浮かべた。
そして、風のような凄く小さな声で

「また ね。」と告げて、


海の家から立ち去った


それの笑顔に気付いた理子は、
微笑んだ。

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