カタチのないセカイの為に

優潤は、美咲の隣に座る。

「貸してみ。俺、謝るから。
親の留守中に、来たのも引っ掛かるし。」


受話器の奥から、
お母さんのガミガミした声は、
まだまだ続いている。


美咲は、受話器を見詰めて、
何も対応してないのに…。


母の愚痴は、まだまだ続きそうだ。


『美咲―。聞いてるの?』 

美咲は、受話器を顔の正面に持ってきて、
何も、聞いていなくても、取り合えず応える。

「聞いてます。」

『誰よ。ハッキリ言いなさい。名前は?』




絶対、名前は言いたくない。



今、言ったら印象悪くなるもん…。

友達の印象を悪くしたくない。


彼氏の印象だって、会ってもいないのに、
悪い先入観を与えたくないよ…。





美咲の顔の前にあった受話器が

美咲の手から離れた。

優潤が、取り上げたのだ。


「ダメー!!」




美咲の抵抗も呆気なく、
優潤は、美咲から遠い方の耳に
受話器を当てた。

「電話、替わりました。穂坂です。」



あー。名前 言っちゃった……。
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