カタチのないセカイの為に
「美咲。」
抱きしめられながら、呼ばれた名前が、
緊張感を張り巡らせる。
BGMもゲーム音もボリュームの高い
ゲームセンターの中で、
こんなに緊張したのは、初めてだった。
そして何故か、
周りの音が、気にならない。
「ここ、出ないと行けないの?」
優潤が、聞いた。
「次、人並んでいるかも知れないから。」
美咲が、応える。
「そっかぁ。」
背中に回された優潤の手が、
するりと解けた。
美咲は、放された腕が、
魔法から、解ける瞬間みたい
と感じだ。
BGMとゲーム音が一斉に聞えた。
やっぱり、ここは、
BGMもゲーム音も…
ボリューム アップアップの
ゲームセンターの中…。
不思議な場所でも無ければ、
魔法の国でも無い…。
何処にでも有る、ゲーセンの
プリクラの機械の中…。