カタチのないセカイの為に

「美咲。」


抱きしめられながら、呼ばれた名前が、

緊張感を張り巡らせる。



BGMもゲーム音もボリュームの高い
ゲームセンターの中で、
こんなに緊張したのは、初めてだった。


そして何故か、
周りの音が、気にならない。



「ここ、出ないと行けないの?」

優潤が、聞いた。



「次、人並んでいるかも知れないから。」

美咲が、応える。


「そっかぁ。」



背中に回された優潤の手が、
するりと解けた。


美咲は、放された腕が、

魔法から、解ける瞬間みたい

と感じだ。




BGMとゲーム音が一斉に聞えた。


やっぱり、ここは、
BGMもゲーム音も…

ボリューム アップアップの
ゲームセンターの中…。



不思議な場所でも無ければ、
魔法の国でも無い…。





何処にでも有る、ゲーセンの
プリクラの機械の中…。



< 214 / 248 >

この作品をシェア

pagetop