カタチのないセカイの為に
「うん…。」
優潤がニッコリポケーと応える。

彼の視線は、お店の前で呼び込みをする彼女に向けられている。

理子は溜息をついた。
「あなた、ちょっと大丈夫?」
「うん…。」
優潤は心ここにあらずといった感じだ…。

「優潤…。あなた、変な人よ。」

優潤は、『ん?』とした顔で、理子をみた。
『なにが?』とでも言いたそうな顔つきである。

「美咲の中の、あなたの印象よ。」

「へ?」

変な人……?

言葉の意味が、直ぐには理解できなかった。
しかし理解すると、優潤の顔はみるみると
『もっと変な人』の顔に変わった。

理子は、そんな素直な優潤に少しだけ同情した。
「暇さえあれば、ここへ来て一人で、にやけて、一人で、笑って…。誰もが変な置物と思っているわよ。」

「…………」

優潤は、一瞬間の自分を想像してみた。
確かに、『変な人』だ。
更に、度を増して、ショックを顔で表現したかと思うと、我に返って彼は微笑した。
「でも、この1週間で、話しかけてもらえるようになったよ。」
優潤の笑顔は、とても嬉しそうだった。


美咲が話しをする男の人は、理子の家の筆事『忠君』しかいなかった。



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