カタチのないセカイの為に
初めてのバイトも最終日を無事に終えて、
美咲と理子は別荘に帰るところだった。

「楽しかったねぇ。
もう少し働いていても、良かったかも。」
「そうだね。
呼び込みしていた時なんて、ナンパかと思う人には、『ふざけんじゃないわよー』って…。
店の前で、大声で追っ払っていたものね。」
理子は、笑った。
「だってさぁ。『何見せてくれんのー。』とか言ってくるし、お店に入らないくせに、『何時から休憩?』とか聞いてくるんだもん。
しかも邪魔だし…。」
美咲は、プンプン顔だった。
理子は、爆笑した。
それは実演販売トークのせいだ!と確信していた。
「観ているの、楽しかったわよ。」
「あはは。バイトもいいもんだね~。」
「そうだね。」
美咲の言葉に理子は肯いた。

理子は優潤の事を思い出した。
いつも、忙しそうに何かしている優潤が、『変な置物化』しているのを、始めてみた。

ずっと働いていたら、本当に置物になっちゃうだろうなぁ。

頭の中に、『置物になっている優潤』が浮かんだ、声にはしなかったが、ゲラゲラ笑えた。




別荘に着くと、いつもより賑やかな声が、響いていた。

「お帰りなさいませ。」
管理人をしてくれている夫婦が出迎えてくれる。

別荘に、来客の予定は無いはずだ。
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