カタチのないセカイの為に
理子は、靴を脱ぎ、足早に応接間に向かった。
ドアのガラス窓から様子を伺ったかと思うと、玄関を上がったばかりの美咲の方へ活きよいよく戻ってきた。

理子は、美咲の方に両手を乗せると、一気に首を落として、
『ハーー』と大きな溜息をついた。

「変な置物が居る。しかも、1つ増えてる。」

「変な置物?」
何の事だろうと、首を傾げていると、
応接間のドアが開いた。


中から、男の人が出て来た。
「おかえりー。おじゃましてまぁす。」

片手を挙げて挨拶をした男の人を見て、
美咲は、あー。なるほど。
と言った口調で真顔で呟いた。
「海の家の置物だ……。戻しに行かなきゃ。」
そこにいたのは優潤だった。
彼には一週間の間に免疫が出来ていた。
「戻さなくていいよ。
海の家の所有物じゃないから。」
彼は、微笑んでいた。

一瞬、美咲はここが何処だかわからなくなった。
ここは…理子の別荘。海ではない。
美咲は眼を見開いた。
「何でここに居るのよー。暇人!!」

「まぁまぁ。怒んないで。」

「怒んないでって言われて、怒られなかった事あるわけ?この暇人!!」

ずかずかと、優潤の立っているドアの前へ進んだ。
『ぷぃ』として、応接間に入ろうとすると、そこには、健吾がソファーの上で、我が家かのようにくつろいでいた。
「…………」
その姿に、空いたままの眼も口も、閉じなかった。


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