カタチのないセカイの為に
江藤美咲(えとうみさ)は、今日も元気な声を張り上げていた。

「いらっしゃいませぇぇー!! 

焼きそば焼きうどん、お好み焼きにたこ焼きもありまぁぁぁす!

夏の暑さに最適な、かき氷とアイスクリームもありますよ~!

さぁぁ
寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!!」



高校生初の夏を、海でエンジョイする為に、
親友の、紅野理子(こうのりこ)と一緒に
『海の近くで観光も楽しめる』この場所へ来たのである。


「美咲……
実演販売じゃないんだから、
『寄ってらっしゃい見てらっしゃーい』って言うのは、どうかと…。」

理子が、肩を落として斜め下を見ながら、美咲に呟いた。

美咲も、肩を落とした。

そして、彼女の眼を観た瞬間、
直ぐ答えを返した。


「だってさぁー。
こう毎日…。って言うか、
毎日って言うか……
毎日・毎日毎日毎日毎日毎日毎日……。
暑くて、汗ダラダラだし、こっちはさぁ…」

声が止まった?こっち?どっち?
理子が少し考える。

急に、美咲が元気になって、暑い夏に更に暑さを加え、
周囲から見れば、喧嘩でも始まるのか?と思わせるような表情と音量で、早口になった。




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