カタチのないセカイの為に
「ご立派になられましたね。」
客人は、優潤を観て微笑しながらクチャクチャな顔を浮かべた。

優潤は、困った顔をした。
「ここに来るまでは、
毎日、顔を会わせていたじゃないですか…。」
「そうですが…。
では…。ここの電気のスイッチは、この辺りの電気です。これが鍵です。」
そんなに多くない鍵の束を、テーブルの上に置く。
「あと、ここは暗いので、懐中電灯を…
ここは、木材が置いてあるので、通り抜けは難しいです。ここは…ここは…」
「はい…はい…。」

「それから、ここは、工事の人が使っているゴミ捨て場があるので、ゴミはこちらに、

隣は『あの時』の場所です。十分気をつけてくださいね。」

「はい。」


美咲と理子は別室で、お茶を飲みながら、
客人が帰っていく様子を窓から眺めていた。

客人は、管理人夫婦と、忠君に深々と頭を下げて、帰って行った。



暗くなる前に、夕飯を食べて、車で出発した。

車内は、盛り上がっていた。
健吾は、打ち上げ花火をマイクにして
流れる音楽に合わせて
歌を歌っていた。

美咲は、海のほうへ向かって走っている車の中で、優潤に話しかけた。
「何処に向かっているの?」


「行ってからのお楽しみ。」
優潤は、微笑を浮かべた。


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