カタチのないセカイの為に

「お待ちください。」
忠君は、健吾に花火やバケツを次々渡し始めた。
塀の内側で、優潤が受け取る。
持ってきた荷物が続々と塀の内側へ運ばれていく。
荷物が全て、中に運ばれると、健吾も塀の中へ降りていった。

塀の内側から優潤の声がした。
「いいよー。おいで。」
その声に、美咲も理子も門と塀の間をよじ登り中に入る。
内側では、優潤と健吾が支えてくれた。

最後に忠君も、中へ入った。


塀の内側は、林になっていた。
道は、二人並んで歩けるくらいの道幅だ。
懐中電灯を持って林の中を進んだ。

日は沈んで、辺りが暗くなってきた。
太陽の余韻が残るだけの明るさだった。

林を抜けると、大きな古い建物があった。

美咲は、辺りを見回した。
「ここって、誰かの家かなんか？
入ったらまずいんじゃない？」


優潤が、応える。
「大丈夫。大丈夫。
もともとは、人が住んでいて家として使っていたんだけど、何年も前に引っ越しちゃって、それからは、別荘として使われていたんだ。
今は古いし床もキシキシいって、雨漏りもヒドイから、建て替えることになっているんだよ。
もぅ工事は始まるし。」

美咲は、不思議そうな顔をした。
「やけに詳しいわねぇ。」

優潤は、困ったような寂しそうな瞳をしていた。
「あ。うーん…。
さっき、理子の別荘に来ていた人いただろう。彼が昔住んでいたから、今の状況を教えてくれたんだ。」