カタチのないセカイの為に
大切だからこそ、言えない気持ちが彼の中にあった。
彼は、必死で気持ちを抑え、時を待っていた。
健吾は、優潤の頭をグシャグシャにした。
「お前は、優しいな。」
優潤は、健吾の眼を観た。
「日々、進化はしているぞ。
沢山…。話しかけてくれるようになった。」
『沢山』と言うところが、進化したらしい。
健吾は、優潤の頭を更にグシャグシャにして、笑った。
二人は俥夫さんに教えてもらった、人力車の終着地点へ向かった。
「ただいまぁー。」
美咲は、人力車の上から大きな声で叫んだ。
健吾は、溜息をついた。
「静かに乗っていれば、お姫様なんだけどな。お前が、拘っているのが解らない。」
優潤は、人力車に乗っている美咲へ手を振り替えした。
「あの子しか、出来なかったんだよ。」
優潤は、宝物でも観るような眼をしていた。
理子は、人力車から降りると、ウキウキとした瞳で優潤に近寄った。
「お参り行こう!!
ここは、勝負の神様なんだって!!」
優潤は、楽しそうな美咲を観て、この場に一緒に居れた事が嬉しかった。
「ああ。」
優潤は、微笑を浮かべた。