カタチのないセカイの為に
四人は石段を登り奥へ進んだ。

健吾が、辺りを見回した。
「ここが勝負の神様かぁ。争いごとは無いに越したことはないからなぁ。」
健吾は願い事が決まっていなかった。
優潤はそれを察した。
「挨拶は重要だろ。」


優潤の言葉を聴いていた美咲が、
グーとパーの手で『ポン』と叩きながら肯いた。
美咲も、願い事が決まっていなかったらしい。
優潤は、『君も願い事、決まらないのね。』と感じ、ガクンとした。


四人は、横一列に並び、お参りをした。

優潤は、最後まで手を合わせて、願い事をしていた。
その姿は、優雅ではあるがどこか犠牲的精神が見えるようでもあった。

美咲は、優潤のお参りが終わるのを待っていた。

「何を、お願いしたの?」

「勝てますように。」

「え?なにそれ?」

「だって、勝負の神様なんでしょ?」

「まぁ。そうだけど…」
美咲は、今の時代の戦いを考えた。
受験戦争しか、頭に浮かばない。
エレベーター式の学校だし、一応試験は有るけど、彼には関係の無い戦争だよなぁ。
しかも、高校一年だし…。

「どんな戦いに行くのよ。」

優潤は、手で口を押さえて視線を美咲から逸らした。




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