カタチのないセカイの為に
美咲は、プンプンと怒っていた。
逆に、優潤はドヨーンと沈んでいる。
傍から見ると奇妙なグループだった。


健吾は、落ちに落ち込んでいる優潤を観て呟いた。
「お前…。何処触ったんだよ。」
優潤はしゃがみこんだ。

「腕…。」


健吾は『はぁ。』と溜息をついた。
「分かった分かった。
いいから、立ち止まるな。立て。歩け。」
優潤は言われるままに、立ってトボトボと歩き出した。
魂の抜け殻のようになっている。
健吾は、更に長い溜息をついた。



車の前に着くと、理子が車から出て来た忠君と話をしていた。
駐車場には、居心地の悪い空気が漂っていた。
理子が話を終えると、健吾に近寄った。
「少し歩きたいし。
お茶して帰るから、先に戻ってて。」
健吾は肯くと、忠君の運転する車に乗った。
理子が、二人の乗った車を見送ってくれた。



優潤は、暗い顔をしていた。
「ねぇ。忠君…。」
「はい。」
「忠君は、美咲とどうやって仲良くなったの?」
忠君は少し考え込んだ。
「わかりません。
でも、余り話しかけられた事はありませんよ。」
「お嬢様といる時に、
その時に必要な事を話すのが多いですね。
ある意味、事務的なことを話しているのかも知れません。」
優潤の思いつめたような暗い顔は変わらなかった。


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