カタチのないセカイの為に
理子は、
「その前に、あれ止めてくれない?」
美咲の方を指差した。
美咲は、二人の男に両腕を掴まれ、
「放して!!やめて!!キモイ!!」
威勢のイイ声をあげている。
二人の男を怒らせてしまったらしく、男達は、強引に車の中に引っ張ろうと車のドアの前で、押し込もうとしている。
金髪の男は、怒っている仲間の二人を見て止められるかが心配になり額に手を当てた。
「やり過ぎだ。 やめ…」
その時、すごい剣幕をした一人の男が全速力で美咲の方へ走ってきた。
今にも美咲は車で連れさらわれてしまいそうだ。彼は、美咲の腕を掴んでいる男達の前で、一度深呼吸して、息を整えると、
ニッコリと笑顔を浮かべた。
「腕、放してあげてくんない?」
それだけ言うと、黙って立ちすくんでいた。
彼は頭の中で5秒数えていた。
『5… 4… 3… 』
男達の手は、美咲の腕から離れない。
『2… 』
美咲の腕は掴まれたままだ。
『1… 』
男達の手は離れない。
『 ゼロ 』
と同時に、
彼は、ものすごい憤怒の形相で男の胸倉を掴んだ。
拳を作り、彼の顔の横には拳が潜んでいる。
とっさに、二人の男は、美咲から手を放し、
「ま、待て」
掌を彼に向けた。
「待ってくれ。
こんな強引な事、するはずじゃなかった」
男は、彼に向けて掌を振った。