カタチのないセカイの為に

何があっても泣かない事。

その事に気付いた両親が心配して、
祖父母から引き離すために
別宅に越してきた事。

優潤は、無表情の子供だった。
自分の意思も持たず、
感情も無かった子供だった事。


その時、別宅の近くに住んでいた
『みさちゃん』に会った。




理子も、『みさちゃん』の事を思い出す。
頭の中で、記憶が蘇る。


確か……。


食事をしている時だった時だった。

優潤の母は、ここに越してきてから、
優潤が、少しずつ笑うようになったと
喜んでいた。
「もう直ぐ、みさちゃん引っ越しちゃうでしょ。
だから、
また前のように戻ってしまうのでは無いかと、
心配しているのよ。」
優潤の母は、少し困った表情を浮かべた。

それを聞いていた、
幼い優潤は、無表情で口を開いた。

「安心してください。笑えますから。」
その大人顔負けの言葉に、
大人たちは、顔色を変えた。

美咲は、ツンとした口調で
優潤の頬に両手をペシッと押さえつけて
顔を潰した。

「その顔が違うのよぅ。その顔が!!
全然笑っていないよ!!
チョットくらい笑って喋ったら？
いつも、怒っているみたいだよ。」