こんなに好きなのに
「こういう事はね、初めてじゃないの……」
「……」
「殴られても、蹴られても最後には彼、優しく謝ってくれるの……」
DV………
彼女はそれを受けていること自覚してるのかな…?
「それってDVじゃん…」
その一言に彼女はとても悲しい顔をした。
「…そうね……そうだけどね……彼には、私しかいないの………」
「……」
「私が…彼を支えてあげなくちゃ……」
「今の貴方は誰よりも支えて欲しそうな顔、してますよ?」
「へへ……バレた?」
彼女は舌を出して微笑んだ。
「前までの私なら、朝になっても次の夜になっても彼を待っていたかも……でもね、君と一緒に泣いてたらあんな奴もうどうでもよくなっちゃった。」
清々しく笑う彼女に"強さ"を感じた。
「さぁて!そろそろ帰るか、少年!」
「……少年…」
「…ありがとね……」
真剣な顔をしたかと思えばいきなり、
ちゅっ………
「しょっぱい」
彼女は無邪気に笑って走っていった。
展開が早すぎて置いてかれる俺をよそに彼女は大分遠くにいってしまった。
「……名前ぐらい聞けば良かった…」
さっきの唇の感触を忘れられず
頬に手をあて動けずにいた。