こんなに好きなのに



俺も大声で泣きたい気持ちになった時にはもう

頬は涙で濡らされていた。


声を挙げる彼女とは対照的に
声を押し殺す俺。


周りからみたら今の俺たちかなり変だと思う、

もう何人もの人に見られ、笑われた。


だけど彼女は気にしてないみたいだし俺も気にせず泣き続けた。




「……なんで君が泣いてるの?」


さっきまで泣いていた彼女が少し笑いながら聞いてきた、



「…貴方が泣いてるの見てたら……すっごい泣きたくなった……」


「あれ?嘘!私のせい?あはは……ごめんね…」



その人の声はあまりにも綺麗で少し驚いた。



「……いや…でもスッキリしました…」


「あはは……」


少し話して、長い沈黙。


沈黙とか嫌いなんだけど、今はなんだか心地良い。




「…そろそろ帰った方がいいんじゃないですか?」


「んー……私はまだここにいる…」


「なんでですか?もう夜遅いですよ……」



チラッと携帯を確認すると今はもう夜の10時を回っていた。

俺らどんだけここに居たんだ……?



「……彼が戻ってきてくれる気がして…」


「え?」



< 9 / 56 >

この作品をシェア

pagetop