僕の守護する君の全て。

首まで地面に埋まった状態で呆けた様に喘ぎ続ける鹿山さん。……きっと彼は、今見せられた『自分の最後』の姿に苦悩しているに違いない。

……こんな方法で再びその瞬間を見せつけられたら僕だって……

「ち……っくしょう…ふざけやがって!!!どこのどいつだっ!!俺をこんな目にあわせやがって……許さねーぞぉぉぉっ!!!」

しんみり…いや、そう感じていたのは僕だけかもしれないが……。とにかく静寂を一気に破り蹴散らす甲高い叫び。

『やってやる』だの『締め上げる』だのぶっそうな言葉の羅列にそれまで一応……ほんの少しはそれらしく振る舞っていたらしいリアン様が、心から面倒臭そうに小指で耳をほじり出す。

「あのねぇ……。殺した方が一方的に絶対悪いーなんて理屈。ボクには通じませんよー?アナタね、それだけの事……ってゆーかぁー…、ぶっちゃけお釣りくるでしょ。これ。」

『ぽんっ!』という軽い音と共に、リアン様の手元に書類を挟みこんだ黒いファイルが現れた。ペラペラとめくり、呆れた様に溜め息を吐き出す。

「あーあー、可哀想に……。ほらこの家族。アナタみたいなのは覚えてないでしょーが、不幸のどん底じゃないですか。うわ……これなんか酷い……。これも。これもっ!」

『生前の行い』というのが事細かに記された個人情報の塊。僕みたいな平ではけして閲覧を許されない重要なファイルをまるで下世話な芸能情報紙でも読んでいるかの如く、ぺらっぺらとめくり見て大袈裟に驚いてみせる根性悪な天使。

この間になんとか少しでも引き上げてあげられれば…そう思って腕に力を込めるもここまでガッツリ沈んでしまっては……。じんわりと滲む汗が目に染みるけれど、それを拭う事すら出来ない。
こちらには一切視線は向けていないけれど…そんな僕の行動すらこの天使は内心楽しんでいるに違いない。……本当、どーしようもなく性格ねじくれまくってる…!

「いやぁ……。酷い。全く同情の余地なし。ボクがもし人間だったらー、間違いなく3回以上はアナタの事、待ち伏せしてサックリいってますねぇ。

むしろー……アナタよくその歳まで無事に生きてこれましたよねぇー?

これってまさに……奇跡?」

しばらく続いた意地の悪いパフォーマンスにも飽きたのか…。

ぱたん!と閉じたファイルを胸に抱き、芝居かかった仕草で首をゆっくり左右に振る。

「死んだら全てがチャラ。とか思ってる人間って多いみたいだけど。

ぶっちゃけ甘いんだよね。本当。

アンタの頭で理解しろってのも酷だけど……

人間の生ってのはさぁ……。

天界での試験みたいなものなの。分かる?

……毎度毎度帰ってくる度増えるその体に巻き付いてく鎖。アンタさ。一体何回生まれ変わったら学ぶ訳?」

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