偽物の国のアリス
門の前で言ったん止まり、ぜーはーと乱れた息を整えていると、白兎が2人の門番となにやら話していた。
「白兎ー。珍しく遅刻だねー」
「本当にねー。どうしたのー?」
対称的な赤色の服を着たそっくりな2人の門番は、感情の入っていない棒読みで白兎と話している。
「どうでもいいから早く門を開けて!女王が怒ってる!」
「おー。どうする?急いでるみたいだねー」
「うーん、可哀想だから開けてあげようかー。でもその前に・・・」
そこのおじょーさんは、誰?とさっきまで白兎に向けていた様な目ではなく、氷のように冷たい目をふいに向けてきた。
ぶるりと背筋が震え、背中に冷や汗が伝う。
『ぁ・・・私は、白兎に連れてこられて・・・』
「ぼくらは門番だからさ、不審者は入れられないんだー」
「ごめんねー?」
いつ取り出したのかも分からない程の早さで、ちゃきりと首筋にひんやりと冷たいナニカを突きつけられる。
視線を下げれば目に入るのは、銀色の剣。
『・・・っ』
私は声も出せず、視線だけで白兎に助けを求めた。
「ディー、ダム!これはアリスだよ!今から女王の所に連れて行くんだから傷つけちゃだめ!ってことで早く門を開けて!」
一瞬2人は顔を見合わせて、なーんだ、と笑った。
「アリスかー。あやうくぼくらは大変なことをしてしまいそうになったんだねー」
「そうだねー。アリスを殺すなんて、ワンダーランドの終わりも同然だもんねー」
剣を腰に戻して、2人はレバーのようなものを引いた。
ぎぎぎぎ・・・
「時間取っちゃってごめんねー白兎ー」
「アリスのこと言えば、きっと女王も赦してくれるよー」
門が開いたと同時に白兎はつかつかと中に入っていった。
後から追いかけていくと、背後からばいばーい、となんともやる気のない声が聞こえた。