偽物の国のアリス
城の中は、大理石の床にハート、スペード、ダイヤ、クローバー、と順番に繰り返し描かれた廊下が最初に目に入った。
そこから奥に続く階段があり、大きなシャンデリアの垂れ下がるホールから二手に別れて、また同じ様な廊下がある。
ちらほらと見えるメイドさんや召使いのような人に挨拶をされて、緊張しながらも挨拶をし返す。
キョロキョロと美しい城を見ていれば、早歩きの白兎に無理矢理手首を引っ張られた。
「女王様の部屋はこの階段を上がった一番奥の部屋だよ」
長針は30をまわっていたけど、白兎はこれ以上急ぐのは諦めたようだった。
こんこんと控えめに扉をノックする。
中から入って、と声がして、白兎は慣れているからか失礼します、と言って入って行く。
私は体を強張らせて白兎の後に続いた。