偽物の国のアリス



私が飛び降りてから約1分。


時計を見てないから正確には解らないけど、多分それくらい経ったと思う。


いまだに地面に付く気配はない。


飛び降りて、いつまで経っても痛みが来ないことに違和感を感じて目を開けると、深い穴の様なところに落ちていた。


人って高いところから落ちると気絶するんじゃなかったの?


意識がはっきりしたままぐちゃぐちゃの肉片やら血が飛び散るところを想像してしまって、すぐさま思考から削除した。








ーーー



もう随分と時間が経つけど、一向に終わりが見えない。


どうしてこうなったのかは知らないけど、私の終わりを邪魔するなんて死んじゃえばいいのに。



ーーー




変わらない景色にも飽きてきた頃、ついに望んでいた端が目に入った。




目を閉じて、もう一度開ける。


その一瞬で今までの思い出が頭の中を駆け巡る。


これが裕に言う走馬灯ってやつか。


『やっと・・・』


思わず口元が緩むのが分かった。


頬に受ける風に乾かされた涙の跡は、誰にも気付かれないだろう。




『やっと、解放される』
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