偽物の国のアリス
「つまるところ君は、あっちでは不幸だったんだ」
その声は沈んでいるような弾んでいるような、まるで同士でも見つけたような声色をしていた。
『あ、あっち?なにそれ。何言ってるの?』
あっちってどっち?
この少年は一体何の話をしているのだろう。
「ここは、君がさっきまでいた世界とは違う。あっちに絶望したその瞬間から、ここへの入り口は開いているんだよ。でも、強い意思がないとここには来れない。君は、選ばれた」
少年は地面に踞る私を見下しながら言った。
・・・見下されているようで居心地悪い。
『・・・確かに現実には絶望してた。だから死のうとした。でも、でもっ、選ばれたってなんなの!?私は早く死にたかった!なんで私は生きてるの!?』
ぽろぽろと涙か頬を伝う。
死にたい死にたい死にたい。
それだけが頭の中をぐるぐると回る。
涙を拭わず耳を塞いで死にたい死にたいと呟く私をじっと見ていた少年が、静かに口を開いた。
「なんで、死にたいの?」
『なんでって私はっ・・・・・・・・あれ?』
「どうかした?」
『わ、私は・・・』
どうして、死にたいんだっけ。