いじわるな君に恋をする
「やだっ…待って、朔弥!!」
私は裸足のまま家を出た
「朔弥っ…待って……ひくっ……行か、ないでぇ…」
朔弥は振り返らずに行ってしまう
その背中は段々小さくなり、やがて見えなくなった
朔弥…
朔弥…
「うっ……ふぇ…」
ただひとつのわがままも、聞いてはもらえなかった
朔弥に居て欲しい
ただそれだけの、わがままなのに
「っ……ひっ…朔弥ぁ…」
ただ、それだけなのに
朔弥は行ってしまった
朔弥…
私はもう、あなたの傍には居られないのだろうか…
もう、笑いかけてもくれないのだろうか…
わがままなんて、言うんじゃなかった
「うっ……わあぁぁあっ!!!!」
街灯の薄暗い光の下
その道には、私の泣き声だけがひびいていた