いちごタルト

花降る心

「おはよー」「はよー」「おはよっ」「はよっすー」「はよはよ」「眠い死ぬ」

皆それぞれの挨拶を交わしながら、門をくぐる。私が入学したのは、ちょっと都会に出た場所にある『魁皇高校』といういかにも読みにくい名前の高校だ。
平仮名で『かいおうこうこう』と読む。漢字で読んでも『かいおうこうこう』と読む。

魁皇高校は、地元でもあまり知られていない高校らしく隠れたイケメンや美女などが出没すると聞いて、それなりに頑張った(これは弟情報)。
周りを見ると、それなりに良いお顔の方々が朝日に照らされながらゆったりと歩いている。やっぱ入学して良かったー。うん、最高。

こんな素敵な高校に入れたのは弟である悠太のおかげだし、帰りにアイスでも買ってきてあげ

「おはよーーーーーーーーーーーーっすー!!」
「ぐへっ」

弟のこと考えてたら後ろからタックルされた。やっぱりアイス買うのやめよう。

「う゛-……。」
「花ァーーーー!!!会いたかったよーうんうんうんうんスリスリ」

ついでに叫ばれて頬にスリスリもされた。

この変態野郎は水乃萌。立派な高校一年生だ。中学校から一緒のクラスになり、そのまま親友を続けている。結構良い人。

「分かったから…分かったからそのスリスリやめて気持ち悪い。」
「うわ酷いよ花!!私がこんなに想ってるのに花は!!花は!!」
「あーうん分かったごめんごめん私も萌のこと大大大好きだから泣かないでー(棒読み)」

でもたまに面倒くさい。

あ。

ふと周りに視線を送る。と、流石にはしゃぎすぎたのか、こちらをチラチラ見ている人が数人…否、もっといるかもしれない。

…やばい。萌は周りのこと気にしないタイプだから視線なんかガン無視するけど、私はガン無視できないタイプ。だから今のこの状況は、ちとキツイ。

「も、萌!クラス表見に行こう!?クラス表!」
「あっ!いいねそれ!!行こ行こ!!」

そう言うが早いか否か、萌は一直線に掲示板へと走り出した。こういう時だけ萌は早い。いつもはのろのろして、ナマケモノそっくりなのに。
……私の周りってのろましかいない?もしかして。

「も、萌ー!待ってよー!」

置いて行かれないよう、私も全速力で掲示板へとダッシュする。

ああ、春休みの間にきちんと運動しとけばよかった。体がなまってる。絶対明日筋肉痛になるパターンだこれ。足を動かす度に、関節が悲鳴をあげる。痛い。


「ま、も、萌…まっ…て…、ぶふっっ」「うぉっ!?」


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