奇妙な関係 ~オスとワタシの奮闘記~
「文美!!」



大きな声で名前を呼ばれ、慌てて振り返った。



「ちょっと!! そんな大きな声で呼ばないでよ!!」

「文美の声のほうが大きいと思うけど?」

「っ!?」



慌てて口を押さえると、優君がぷっと吹いた。


誰のせいだと思ってんのよ!!


わざと睨みつけると、涼しい顔をした優君がゆっくりと近付いてきた。


優君が目の前で立ち止まり、私は思わず身構えた。



「連絡先教えて」

「……は?」

「は?じゃなくて、番号入れて」



携帯を差し出されたが、受け取らなかった。


個人的に今後も会うつもりはないし、ましてやこの事が社長、もしくは社内の人に知れたらと考えるとゾッとする。



「早く」

「連絡先を教える意味ないと思うんだけど……」

「教えないなら毎日でも通うけど?」

「は、い……!?」



優君ならやりかねない。


瞬時にそう思った。



「分かった……でもこの事は社長には言わないでね」

「こんな事オヤジに一々報告しないから」

「社内の人に暴露ても厄介だから、社内とか会社の周りで会っても馴れ馴れしくしないでね」

「……文美の立場を考えればそれはしょうがないよな。 我慢してやるよ」



なんて上から目線……でもそこは素直に聞いてくれて良かった。


優君の携帯に番号を入れ、私たちは今度こそお別れした。





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