奇妙な関係 ~オスとワタシの奮闘記~
日下部さんは優君の顔を見るなり、驚いた顔をした。


そうだよね。


ただの高校生かと思いきや、うちの会社の社長の息子だもんね。



「お父様を訪ねていらしたのかな? それなら残念だけど取材で外出され……」

「オヤジは関係無い。 文美に会いに来ただけだから」



ちょ、ちょっとぉぉぉ!!


あれ程会社の人にばれないようにしてって言ったのにぃー!!



「君の気持ちは分かったが、誤解されて大変な思いをするのは鈴川さんだって事、ちゃんとわかってる?」

「誤解って何だよ」

「社長の息子と時間外に会ってると知られたら、鈴川さんは会社に居づらくなるんだよ」



グッと押し黙る優君。


「そんな事ないです」とも言えなかった。


噂は怖い。


その事はよく分かってる。



「あ、あの……たまたま会っただけですから。 私はそろそろ失礼しますね」



この場をどう収めればいいのか分からなくて、私は逃げ出した。


二人に頭を下げ、誰とも目を合わせないまま急ぎ足で駅へと向かう。





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