奇妙な関係 ~オスとワタシの奮闘記~
なんだろう……。


泣きたいわけじゃないのに、涙が込み上げてくる。


下唇を噛み締め、必死に涙を堪えた。



「お前と居ると楽しい。 嫌な事なんて一つもない。 でも、俺は幽霊で……抱きしめてやる事も、プレゼントを買ってやる事もできないんだよ」

「それでも私っ……春ちゃんと一緒がいい……だって、春ちゃんの事……」

「文美」



真剣な声に遮られ、私はゆっくりと顔を上げた。


春ちゃんは安心させるような優しい笑みを浮かべているのに、どこか寂しくも見える。



「お前はいい女だよ。 一人でいるなんて勿体ねぇよ」

「な、な、何言ってんの? らしくない事言わないでよ……」



そんな事言われたってちっとも嬉しくない。


ただ胸が苦しくなるだけ。



「結婚して、幸せな家庭を築けよ」

「結婚なんて興味ないもん……」



小さい頃はお嫁さんになるのが夢だった。


でもその夢はいつしかなくなり、男なんて絶滅してしまえばいいとさえ思うようになった。


だけどその歪んだ心を癒してくれた春ちゃんと、結婚できたらいいのにな……って正直思った事もある。


付き合うのも結婚するのも春ちゃんじゃなきゃ何の意味もない。





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