『主夫』だって『恋』してますけど何か?


「優、何食べたい?」

百貨店を出て、街中を藤堂と歩く。


「・・・・別に。何でもいい。」

藤堂の問いに
優はそっけなく返事した。


「そんな冷たくすんなよ。
これからしばらく
一緒に仕事すんのに。」


「だったら・・・・・
指輪なんて渡さないでよ。」

優は藤堂に渡された婚約指輪を
思い出しながら目を伏せ、言った。


「何?俺のこと
意識してくれてんの?」


「ちがっ・・・・」


慌てて否定しようと藤堂を
見上げると、凄く切ない顔で
見つめられていたから優は言葉を失う。


藤堂は悲しそうに切なく
でも愛おしそうな眼差しを
自分に向けている。


優はこの顔を昔見たことがあった。


(・・・・なんで・・・・別れた時と
同じ顔してんの?)


優は複雑な気持ちになる。



藤堂に貰った婚約指輪の内側には
メッセージが彫られていた。


”Ti Amo-YUU”


イタリア語で”愛してる”



(・・・・・浮気してた癖に。)


優は何だか苦しい胸を押さえながら
藤堂から目を反らした。





「なぁ優。
お前の旦那ってどんな人?」

目を反らした優に藤堂が質問した。



「・・・・・・優しい人。」


答える気はなかったのに
藤堂の質問に和樹の笑顔が浮かび
思わず出た一言。



(・・・・・なに真面目に
答えてんのよ私。)

自分自身にビックリした。



「・・・・そっか。」

藤堂はビルが建ち並び、
その隙間から覗く
狭い空を見上げて小さく返事をした。



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