『主夫』だって『恋』してますけど何か?
「やっぱり和樹だぁ♪」
顔を上げると、
ショートボブの小柄な女性。
彼女は愛嬌ある笑顔で
俺の名前を呼ぶ。
「・・・・・・・小夜子?」
嘘だろ・・・・
なんで小夜子がここに。
目の前で笑っているのは、
昔のあどけなさは無くなった
ものの、変わらない笑顔を向ける
俺の痛い思い出の初彼女。
「和樹君、倉野さんと
知り合いだったんだ。」
俺の隣で藤堂さんが
意外そうな顔で言った。
「中学の同級生なんです!
それより、藤堂さんこそ
和樹と知り合いなんて!
全然関わりなさそうなのに。」
小夜子はそう言って
藤堂さんに愛嬌を振り撒く。
「まぁ・・・色々とね。
同級生なんて偶然だね。
倉野さんは今、この百貨店の
立て直しの取材で来てるんだ。」
やんわりと話しを俺に振り
小夜子の質問を交わす藤堂さん。
「へえ・・・・・・」
俺は動揺し過ぎて
まともに言葉を返せない。
取材って・・・・・
じゃぁ小夜子は優さんにも
会ったりしたわけ?
頭の中はぐちゃぐちゃ。
「・・・・・和樹。」
動揺していた俺の耳に
届いた、大好きな声。
「・・・・・優さん。」
声の主を見ると少し
気持ちが落ち着いた。