『主夫』だって『恋』してますけど何か?


小さな店の入り口の前に来ると
ふと優の足が止まった。


「どうした?」

藤堂はそれに気付き優を見る。


「・・・・違うお店にしていい?」

優は藤堂を見上げお願いした。


「・・・・・いいよ。
優と一緒にいられるならどこでも。」

藤堂は一瞬驚いていたが
直ぐに微笑むとそう言った。



(・・・・・このお店に入ったら
肇とのいい思い出だけが
蘇りそうだからダメ。)


優はドアの小さな窓から見えた
昔と変わらない温かい
オーナーシェフの顔を見て思った。



”早く2人の子供が見たいなぁ。
絶対可愛いぞ”


優と藤堂が2人で行くと
いつも笑顔でそう言われた。


昔、藤堂と優は恋人だったから。



藤堂と別れてからは
一度もオーナーシェフとは
会っていない。


きっと別れた事なんてとうに
藤堂が言ってるんだろうけど
会わす顔も無かった。



優は藤堂を車に案内し、
後部座席のドアを開く。


「・・・・普通助手席じゃない?
俺、社長じゃないんだけど。」


後部座席に座れと無言で意味する
優の行動に垣内は苦笑い。


「助手席だと、あんた
何してくるか解らないから。」

優は冷たくそう言った。


「ははっ少しは警戒心
強くなったじゃん。」

垣内は笑いながら後部座席に座る。



それを確認すると優は運転席に座り
車を走らせた。



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