『主夫』だって『恋』してますけど何か?


優は和樹が辞めた今でも
このバーにはたまに来ていた。


茜と来る事もあるが
ほとんどが男の人と。


別に浮気じゃない。
むしろそう思われたくないから
ここに来る。


一緒にくる男はみんな仕事絡みだ。


男性の社長なんかに良く
食事に誘われる優は、
2人きりなら必ずここの
バーにしてもらう。


何があってもマスターが
助け舟を出してくれるから。


だいたいの男は、優に沢山
お酒を勧めて酔わそうとする。


断る術は心得ていても、
機嫌を損ねる場合もあるから
そんな時、マスターはちゃんと
優のカクテルのアルコールを
控えて出してくれるのだ。



(・・・・本当、肇は強引だ。
マスターから離れた
席になっちゃった。)


優が藤堂に椅子を引かれて
座ったのはカウンターに
斜めに背を向ける場所。


マスターからは藤堂の
表情しか見えないだろう。


いつもはマスターと目で会話するから
少し不安になった優。


(・・・・今日は車だし、
お酒飲まなきゃ大丈夫か。)

頭の中は藤堂に対する
警戒心でいっぱいだった。



「優、ここ良く来るんだ?
さっきマスターみたいな人に
名前呼ばれてたな。
何がオススメ?」


そんな優に対して藤堂は楽しそうに
メニューを見ながら話しかける。


「昔から来てたからね。
軽食しかないけど、
どれも美味しいわよ。」

優はぶっきらぼうにそう答えた。



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