『主夫』だって『恋』してますけど何か?
「・・・・・・・なによ」
優が差し出した左手を藤堂は
左手でそっと掴むと腕だけ
自分の方へ引き寄せた。
テーブルの真ん中にお互いの手が
来たところで、優の薬指に藤堂は
指輪をはめる。
「・・・・・・・・どうゆうつもり。」
優は、大きな瞳を揺らしながら
直ぐにテーブルから手を引っ込め
指輪を外した。
「まだサイズピッタリでよかった。
それ、お前に渡しそこねた指輪。
貰ってくんない?」
藤堂はにこりと微笑む。
「渡しそこねたって・・・・」
(何を言ってるの?)
「俺さ、昔優にプロポーズする
つもりだったから。
・・・浮気しといてなんだけど。」
藤堂は苦笑い。
藤堂と優が別れたのは
彼の浮気が原因だった。
「・・・・だからってどうして今更。
からかうのやめてよ!
・・・・はい。返す。」
優は外した指輪を藤堂の前に置いた。
「そう言うと思った。
でもこれはお前のだから。
名前も入ってるし。
いらないなら
捨ててくれたらいいよ。」
鞄から指輪のケースを取り出し
指輪をしまうと藤堂は
そのまま優の前に置いた。
「いらない!」
優はまた藤堂の前に突き返す。
「だからいらないなら
捨ててくれたらいいって。
俺持ってても仕方ないし。
それに・・・・嫁さんに
見られても大変だろ?
だからって捨てる勇気もなければ
俺には売るなんて
ダサい真似も出来ないよ。」
藤堂は苦笑いをした。
藤堂は、結婚していて
子供もいる。
(そうだ・・・肇には奥さんと子供。
だったらなんであんな事・・・・)
優は先日、藤堂に
無理矢理キスされた事を思い出す。