夏男と夏子
と、俺の名を遠くで呼ぶ声が聞こえてきた。
「ナァツッゥゥ……、コッチコッチ! イケェェ……」
――いやいや、まだ休憩時間内だろ。
あんだけ働いたんだ、きっちり休みは取らせてもらうぜ。
「ナツ、パスパス……」
――うるせぇなぁ……
もう少し夏と一体感を満喫していたかったが、名を呼ばれちゃ仕方ない。
根が真面目なもんで、聞こえない振りとかできねぇ性質なんだ。
俺はくるりと身体を回転させ、平泳ぎで浜に向かって泳ぎだした。