夏男と夏子
得意の泳ぎで遠景から臨んだ浜辺、バイト先の海の家から少し離れた砂浜に、結構な人だかりが出来ているのが俺の視界に入った。
――なんだありゃぁ……
好奇心が勝って、俺は上陸目標を人だかりの方角へと変えた。
どよめく群衆、伝わる熱気。
浜に近づくに連れ、俺を呼ぶ声は更に大きさを増していった。
「ナツナツナツ、ナイスショ!」
「ナツ! ナツ! ナツ!」
――って、ナツって誰だ?
ここまできて、俺はやっと、呼ばれた主が自分でないことに気が付いた。