夏男と夏子
夏子はどうも秋男の声に異常に反応良すぎる。
「な、なに?」
「秋男、用は何だ?」
「あ、いや、バイト、どうだったかな……って」
「あぁ、ちゃんと行ったし、働いた。めいっぱいな」
「あ、ならいいんだ」
「お前こそ、どうだったんだよ」
「えっ、あぁ、まぁ……、それはゆっくり後で、俺、康子待たせてるから」
そう言って、秋男は走って逃げた。
――まったくもう尻に敷かれてるのかよぉ
「やっぱり秋男さんの声って……」
隣りで意味深な言葉を呟く夏子の方を、俺は振り返らずに聞いた。
「秋男の声がなんだって?」
「素敵だなぁ、って」
――なんだよ、それ!