夏男と夏子
が、八月の終り、大学もそろそろ始まろうかという微妙な頃あいで、夏子から電話がかかってきたのだ。
「ハァイ、夏男くん、元気してる?」
俺は言葉を失った。
「なんで、お前が俺の携番知ってるんだよ?」
「え、だって、履歴書に書いてあったよ」
悪びれず答える夏子の本心を計りかねた。
「で、なんだよ」
「ビール飲みにいこ」
「は?」
「とりあえずビール」
「お前、俺をおちょくってんのか?」
「だって、夏男くんと飲んだビール、最高だったよ」
無邪気に俺をビールに誘う夏子の本心を計りかねた。
でも、まぁ、俺も男だ。
惚れた女の誘いを断るのはもったいない。
何より夏子の本心を見極めに、指定されたビアホールへと出向いた。
そして何回かのビアホール通いの末、わかったことが一つ。
夏子は酒もめっぽう強い、ってこと。
酔わせて本音を探ろうなんて甘い考えは捨てざるを得なかった。
で、まぁ、今に至るってわけだ。