あおぞらカルテ
case11 3歳男児 ネフローゼ症候群
1か月ぶりの大学病院は、何も変わっていなかった。

なのに、身体が都会時間に戻らなくて、変に空回りしている。

朝からロッカーの荷物をぶちまけるし、ボールペンを2本も無くすし、白衣のボタンは取れるし…ついてねぇなー。

1か月の田舎暮らしは、案外ゆったりしていて良かったなぁ…。


「道重先生、カンファはじまってますけど?大丈夫ですか?」


慌てた様子の医学生が、後ろからオレを追い越して走って行く。

小児科の研修が始まっていた。

しかも、なんで医学生がオレについてんの?

こっちだって半人前なんだよ!!

スローライフから現実に戻りきれていない身体にムチ打って、仕方なく若々しい医学生を追いかけた。


「…面田乃愛ちゃん、今日からNICUを出て病棟管理に移行します。今朝のラボデータですが…」


カンファレンス室のドアをそっと開けると、シニアレジデントの先輩がプロジェクターを使って症例提示中だった。

やべぇ~…3分遅刻。


「じゃあ次、高田蓮くんの担当医」

「はい、飯塚が担当してますが、研修医の道重がプレゼンします」


オーベンの飯塚先生と目が合った。

ちょ…聞いてないし!!!


「じゃあ道重先生、前にどうぞ」


小児科の副部長から呼ばれて、後にひけなくて、息が上がったまま前に進み出た。
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