あおぞらカルテ
「先生もカゼなの?」


じっと不思議そうにオレを見つめる。

飛行機の模様が入ったマスクをつけた、平河柊斗くん、7歳。

生まれつき心臓の心室がひとつしかない病気で、今まで3回手術をうけてきた。

根治術であるフォンタン手術を受けたのは2歳のとき。

けれど、それは正常な心臓になったわけじゃなくて、“うまく付き合っていけば問題ない”という意味。

今回は肺炎疑いと、出血傾向があるということで入院になった。


「おう、先生もカゼ。おそろいだなぁ。けど、柊斗くんのほうがカッコイイマスクしてんじゃん?」


そう言ったら、照れくさそうにしてお母さんの陰に隠れた。

幼く見えるのは、ほんの少しだけ発達が遅れているからか?


「今は支援学校にいるんです。ホントは普通学級が良かったんですけど…」


お母さんの悩みは尽きないようで、今回の入院も突然で戸惑っている様子。

本人は入院には慣れっこなのか、顔見知りの看護師に甘えてみたり、お気に入りのゲームで遊んだりしている。


「フォンタン手術のあとは、特に肺がよくないといけませんから、しっかり治療して帰りましょうね」


そう言ったら、お母さんはちょっとだけ笑顔になった。


「道重先生って、もしかして、お父様もお医者様でいらっしゃいます?」
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