あおぞらカルテ
そういえば…

手術記録を検索すると、フォンタンの執刀医が“道重律”になっていた。

5年前、親父が執刀した子が、今こうしてオレの担当患児に…。

なんか変な気分。


「“しっかり治しましょうね”って、同じことを言ってくれて、苗字も同じだしもしかして…って」

「そうでしたか」

「なんとなく雰囲気も似ていらっしゃいますよね?」

「え?そうですか??」


顔は母親似だし、クソ真面目な親父とは正反対の性格だし、似てるところなんて思い当たらないのに…。


「よろしくお願いします」


親父みたいに立派な医者でもないのに、お母さんは深々と頭を下げる。


「いえいえっ!こちらこそ!未熟者ですけど、主治医の飯塚先生と一緒に診させてもらいますのでっ!」


柊斗くんは、親父が執刀した患児ってことで、なんとなく特別な存在になった。

5年前の手術記録を引っ張り出せば、詳細な記録が親父の文字で書かれていて、タイムカプセルを開けた気分だった。

その記録をそっくりそのまま模写しただけで、まるでその手術に立ち会ったみたいに、すごくリアルに想像できた。
< 128 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop