あおぞらカルテ
こんなにしゃべる子なんだって、この時に初めて知ったんだ。

普段は大人しくて、引っ込み思案で、お母さんの陰に隠れてることが多いのに。


「2000回はすごいなぁ~」

「昔は、いちまん回できたんだって」

「そりゃすごいな。柊斗くんはサッカーするの?」


オレの質問に、柊斗くんはまた浮かない顔に戻る。


「…ぼく、サッカーしたらダメなんだ。しんぞうが悪いからって、お母さんが言ってた。本当は、お父さんのチームに入りたいのに、ダメなんだって」


はっとした。

柊斗(しゅうと)って名前も、きっと父親の影響でつけられた名前。

なのに、病気のせいで…。


「ぼく、一生サッカーなんてできない?先生だったら治せる?」


純粋そのものの目に見つめられて、オレは言葉を失ってしまった。


「ぼく、また手術する。そしたら治る?」

「…柊斗くん。柊斗くんの病気はね、ちゃんと治してあるんだよ?」

「でも、サッカーも、体育もしちゃだめなんでしょ?」


不可能じゃない。

うまくやれば、全力疾走も、水泳も、きっとできるはず。

だけど、その限度を決めるのは困難で、お遊びのサッカーごっこなら可能だけど、長時間に及ぶ試合は無理かもしれない。

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