あおぞらカルテ
“オレも医者だ”発言は無視され、人を病人扱いし出す里香は、さっさとスマホで病院を検索しはじめた。


「あのさぁ、普段優秀な医師に囲まれて仕事してんだよ?里香に心配されなくても…」

「私だって一人のナースよ」

「そうだけどさぁ」


心配してくれるのはありがたいけど、ただの疲労で病院にかかるのは、医者として恥ずかしいんじゃないか?


「何もなかったらそれでいいじゃん?私も付いていってあげるから」

「えぇ~…」


町の小さな個人病院の待合室は薄暗く、老人たちの憩いの場になっていた。

診察室の前に掲げられた“今日の担当医師”の名前には見覚えがある。

いつも“超”がつくくらいキッタナイ字で紹介状を書いてくる消化器内科の医者。

しかも、ウチみたいは大学病院に送ってくる程でもない軽い症例も紹介してくるから、雑務係のオレには敵とも言える相手。

オレの中ではヤブ医者のレッテルが貼られているくらいの医者だ。
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