あおぞらカルテ
case16 62歳男性 直腸癌
良い意味でも、悪い意味でも、村瀬先生は面倒見のいい放任主義だ。

突然現れてレクチャーしてくれたかと思ったら、気づけばもういなくなっていて、オレは一歩出遅れることが多い。


「道重先生、まだこんなところにいたんですか?」


放置されて病棟で残務整理していたら、看護師さんに言われて気づく。

…もしかして、もう始まっちゃった?


「2例目のオペ、先生入るんでしょ?もう患者さんはオペに出られましたけど?」

「マジすか!?」


前に行われるオペの進行によって時間が前後する“2例目”だとか“3例目”なんてオペは、油断すると置いて行かれてしまうんだ。


「遅くなりましたっ!!!」


走って到着したときにはオペ室の看護師は準備万端で、さっさとガウンをオレに着せる。

…間に合っ…てなかった…!


「道重~、おっそいよ。待ちくたびれた」

「すすすすみませっ…」

「もうセルフサービスで消毒終わっちゃったよ」


本来、この消化器外科の暗黙のルールとして下っ端の医者がやるべき“消毒”という作業を、執刀医の村瀬先生自らがやってしまっていた。


「…いつ1例目のオペが終わったんですか…!?だって、予定時間は3時間って…」

「甘いなぁ~。匂いでわかるだろ、早く終わるか終らないかなんてさ」

「すみません!修行が足りなくて全然鼻がききませんでしたっ!!」


そう言ったら、村瀬先生はニヤっと笑う。
< 153 / 153 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:14

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

heart to heart  +love☆

総文字数/16,566

恋愛(純愛)39ページ

表紙を見る
Dear my Dr.

総文字数/69,448

恋愛(その他)120ページ

表紙を見る
歳の差レンアイ、似た者同士。

総文字数/41,475

恋愛(純愛)79ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop