あおぞらカルテ
case16 62歳男性 直腸癌
良い意味でも、悪い意味でも、村瀬先生は面倒見のいい放任主義だ。
突然現れてレクチャーしてくれたかと思ったら、気づけばもういなくなっていて、オレは一歩出遅れることが多い。
「道重先生、まだこんなところにいたんですか?」
放置されて病棟で残務整理していたら、看護師さんに言われて気づく。
…もしかして、もう始まっちゃった?
「2例目のオペ、先生入るんでしょ?もう患者さんはオペに出られましたけど?」
「マジすか!?」
前に行われるオペの進行によって時間が前後する“2例目”だとか“3例目”なんてオペは、油断すると置いて行かれてしまうんだ。
「遅くなりましたっ!!!」
走って到着したときにはオペ室の看護師は準備万端で、さっさとガウンをオレに着せる。
…間に合っ…てなかった…!
「道重~、おっそいよ。待ちくたびれた」
「すすすすみませっ…」
「もうセルフサービスで消毒終わっちゃったよ」
本来、この消化器外科の暗黙のルールとして下っ端の医者がやるべき“消毒”という作業を、執刀医の村瀬先生自らがやってしまっていた。
「…いつ1例目のオペが終わったんですか…!?だって、予定時間は3時間って…」
「甘いなぁ~。匂いでわかるだろ、早く終わるか終らないかなんてさ」
「すみません!修行が足りなくて全然鼻がききませんでしたっ!!」
そう言ったら、村瀬先生はニヤっと笑う。
突然現れてレクチャーしてくれたかと思ったら、気づけばもういなくなっていて、オレは一歩出遅れることが多い。
「道重先生、まだこんなところにいたんですか?」
放置されて病棟で残務整理していたら、看護師さんに言われて気づく。
…もしかして、もう始まっちゃった?
「2例目のオペ、先生入るんでしょ?もう患者さんはオペに出られましたけど?」
「マジすか!?」
前に行われるオペの進行によって時間が前後する“2例目”だとか“3例目”なんてオペは、油断すると置いて行かれてしまうんだ。
「遅くなりましたっ!!!」
走って到着したときにはオペ室の看護師は準備万端で、さっさとガウンをオレに着せる。
…間に合っ…てなかった…!
「道重~、おっそいよ。待ちくたびれた」
「すすすすみませっ…」
「もうセルフサービスで消毒終わっちゃったよ」
本来、この消化器外科の暗黙のルールとして下っ端の医者がやるべき“消毒”という作業を、執刀医の村瀬先生自らがやってしまっていた。
「…いつ1例目のオペが終わったんですか…!?だって、予定時間は3時間って…」
「甘いなぁ~。匂いでわかるだろ、早く終わるか終らないかなんてさ」
「すみません!修行が足りなくて全然鼻がききませんでしたっ!!」
そう言ったら、村瀬先生はニヤっと笑う。