あおぞらカルテ
まだ少し肌寒いこの季節。

太陽は落ちかけていた。


「すみませーん」


御守りを打っている売店のおばさんに声をかけた。

おばさんは一瞬だけ面倒くさそうな顔をしたけれど、オレの顔を見て目を見開いた。


「あら、道重さんのとこのお孫さんよね?そらくんじゃない?」

「え…あ、はい。そうですけど…」

「お医者さんになったんでしょ!?スゴイじゃない~」


オレが知らないところで知られているって変な気分だ。

気をとりなおして、例の写真を出す。


「この人、見覚えありますか?」

「うーん…確かにうちの鳥居だわね。でも、これ随分昔の写真じゃないの?」


じっと写真を見つめていたけれど、やはり知らないみたいだ。

オレは見当違いのことをやってんのかなぁ…。

そう思ったとき、境内の奥から神主さんがやってきた。


「あぁ、あなた。この人に見覚えはあるかって…」


どうやらこのおばさん、神主さんの妻らしい。

神主さんは写真を一目見て驚いた顔をした。


「美由紀ちゃんじゃないか?」

「美由紀ちゃん?誰よそれ」


明らかに不機嫌になるおばさん。

わかりやすいな…。


「ほら、自転車屋の娘さんだよ。一度結婚して、結局別れてまた帰ってきてたじゃないか」

「でも、こんな子供さんいたかしら?」

「そういえばそうだな…帰ってきたときには子供はいなかったはずだけど…」


とにかく、行ってみるしかないな。

2人にお礼をいって、その自転車屋に向かった。
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