あおぞらカルテ
行列に並びながら、里香を観察する。

なんとなく髪が伸びた気がする。

それくらい会ってなかった。


「里香…ごめんな」

「んー?なんか言った?」


あと1年半も研修医生活が続くと思うと吐き気がする。

里香に愛想つかされるかもしれないし。


「里香、仕事たのしい?」

「楽しくはないよねー」

「そうなんだ」

「そりゃそうだよ。ドクターにはエラそうに言われるし、患者さんのクレームを聞くのは私たちナースだし、板ばさみっていうか…色々大変なんだよ」

「そっか」


仕事に楽しさを求めるのが間違ってるんだろうな、きっと。

妙に納得して、それから里香とくだらない話して、のんびりした時間を過ごした。

20分待ってようやく座れて、好きなものばっかり食って、腹が満たされた。

なのに…

なんだか落ち着かない。

ぼんやりと街を歩く。


「あれー?ここ、何が建つんだろ?」


里香が上を見上げた。


「前は何だっけ?予備校か何かだったか」

「そうそう。ふーん…ビジネスホテルになるんだって」


そのとき。

何かの金属が落ちる音。

そして、人の叫び声。

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