あおぞらカルテ
植物状態で生き残っても、誰の面会もない。

ただ生かされているだけの人間になってしまったら…?

92年生きてきて、長年連れ添った妻に先立たれ、苦悩の末に選んだ道だ。

オレなら黙って逝かせてやる。

これは医者として間違ってるかもしれないし、一個人の価値観かもしれない。

そして、小畑は言った。


「なんで?助からないかもしれないけど、それが義務だからだよ」

「義務ってなんだよ!?」

「お前は負け試合には手を出さない、卑怯なやつだな」

「人間の生死に勝ったも負けたもあるかよ!?」


結局、挿管された後、数時間後に妻の元へ旅立った。

散々処置をされた後が痛々しい。

ごめんなさい、そう思いながら見送った。


「オレ、間違ってますか?」


悔しくて田尾先生に聞いた。


「いや、間違ってるとは思わないし、かといってそれが正しいとも言えないな」

「じゃあ先生ならどうしますか?」

「…お前と同じだよ。だけど、いつもそれが正解ってわけじゃないんだ」

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