あおぞらカルテ
そもそも、人の死に触れたのはオレが小学生のころ。

子供の頃は、自分の母親が死ぬなんて、思ってもみなかったんだ。

いつも笑ってて、オレのことを甘やかしながら時々叱ってくれて、最高に優しくて大好きだった母さん。

体が弱いのは知ってた。

だけど、まさか死ぬなんて。

父さんは名の知れた医者だったけど、特別母さんの治療をしたわけじゃなかった。

それがオレには納得できなかった。


「なんで治してくれないの?」


そんな風に言って父さんを責めた。

だけど、だんだん大人になって、今ではその意味を理解できる。

母さんが“生きる”ために、父さんは最後まで何も言わず見守ったんだ。

人間が死ぬことを考えるとき、今どう生きたいかってことを同じように考える。

だから、オレは死ぬことを“負け”だなんて思わない。
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