あおぞらカルテ
case10 97歳男性 肺炎
この病院では訪問診療をやっていて、自宅療養中の患者さんや、気になる患者さんの家まで院長直々に足を運んでいる。
御年63歳、もうすぐ定年の院長先生は、今まで見てきたどの“院長”よりも働き者だ。
「井口さーん!こんにちは!」
車から降りた院長先生は、畑に向かって声をかけた。
「あぁ、院長先生!ごめんなさいね!すぐにそっちに行きますから!」
畑の手入れをしていたお婆さんは、頭に巻いた手ぬぐいを外しながら、のしのしと長靴の足でこっちへやって来る。
「おじいさんね、先生はまだかーって昨日から待ってたんですよ。よっぽど往診が楽しみらしくって」
「そうですか。わたしも井口さんに会うのを毎週楽しみにしてるんですよ」
「あらやだ!先生ったら!」
お婆さんは膝が悪いのか、ちょっとヒョコヒョコしながら畑の向かいにある家に歩いていく。
院長先生はオレにこっそりと言った。
「井口さんは、お爺さんが寝たきりで、奥さんと娘さんが介護してるんだ。三年前だったかな…脳梗塞で…」
そんな介護の大変さを微塵も感じさせないで、お婆さんは笑って勝手口から家のなかに案内してくれた。
案内というか、その名の通り“勝手に入れ”って感じだけど。
御年63歳、もうすぐ定年の院長先生は、今まで見てきたどの“院長”よりも働き者だ。
「井口さーん!こんにちは!」
車から降りた院長先生は、畑に向かって声をかけた。
「あぁ、院長先生!ごめんなさいね!すぐにそっちに行きますから!」
畑の手入れをしていたお婆さんは、頭に巻いた手ぬぐいを外しながら、のしのしと長靴の足でこっちへやって来る。
「おじいさんね、先生はまだかーって昨日から待ってたんですよ。よっぽど往診が楽しみらしくって」
「そうですか。わたしも井口さんに会うのを毎週楽しみにしてるんですよ」
「あらやだ!先生ったら!」
お婆さんは膝が悪いのか、ちょっとヒョコヒョコしながら畑の向かいにある家に歩いていく。
院長先生はオレにこっそりと言った。
「井口さんは、お爺さんが寝たきりで、奥さんと娘さんが介護してるんだ。三年前だったかな…脳梗塞で…」
そんな介護の大変さを微塵も感じさせないで、お婆さんは笑って勝手口から家のなかに案内してくれた。
案内というか、その名の通り“勝手に入れ”って感じだけど。