それでも僕は、お前が嫌いだ

 「僕はウサギを狩るのにも全力を出すライオン(獣)だよ」

 ニコリと浮かべた微笑に男の背中の毛が逆立つも、怯まず男がアベルに杖を向ける。

 『手を、足を、声を、我お前を呼ぶ者。こちらへ。前へ、前へ!』

 男の発する言葉が酷くチグハグに思えて、アベルは前髪をかきあげて呟いた。

 【全盲の両眼、聞こえぬ耳、動けぬ両足】

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