それでも僕は、お前が嫌いだ

 「…では、アベル様とお呼びしましょう。アベル様。あなたにとってこの状況は分が悪い。どうでしょう、大人しく負けを認めてみては?」

 首を傾げる男にアベルはゴホゴホと咳き込む。

 咳をすると同時に、口を押えた左手に血が伝う。

 「殺さず捕まえろ。それが命令です。あなたには死んで欲しくないのです」

 両手を広げて熱弁する男に、アベルは血の混ざった唾を吐き捨てた。

 

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