君と杯を交わそう ~契約婚から築く愛~
「さ、佐伯さん…。紫苑は普通の子ですよ。そんなうちの子にSAKIの経営に携わっている佐伯さんに……」
「確かに、紫苑さんは秘書としての能力はないかもしれません。しかし、私にとって紫苑はかけがえのない女性でこれから先、共に歩んでいきたい人なんです。紫苑が今の仕事を続けたいのなら、続けても構わないし、専業主婦がいいのならそれでも構わない。私は紫苑と共にいたい、ただそれだけなんです」

偽りの結婚をするための言葉だとしても、演技をしているとわかっていても、紫苑は涙を浮かべていた。
偽りの言葉に対する悲しみの涙なのか、流石としか言いようのない陵の演技に対する感動の涙なのか。わからないけれどその涙のお陰か、二人の結婚は紫苑の両親には承諾を得ることが出来た。
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