君と杯を交わそう ~契約婚から築く愛~
母親の了承を得ることは難しいと分かっていた。

「…良かったんですか?あんなこと言って」
「いいんだよ。お金持ちってことで、色んな人と色んなことでトラブってきた。それがずっと嫌で、俺はあの家を出たんだ」
「ところで、咲魔さんと翠さんっていうのは?」
「咲魔は父親の源氏名で、翠は弟の源氏名」
「源氏名……」
「もう1つの名前みたいなもんだな。外じゃ、基本的に源氏名で呼ぶように躾られてきたんだ。とにかく、色んなことが普通の家とは違っていて、俺は凄く嫌で仕方なかった」


特殊な家庭で育った純哉に珠洲は本当に幸せになれるのか、不安で溢れてくる。そんな珠洲を感じとったからか、純哉は優しく話す。

「心配しなくていいよ。そんな風に育ったから人一倍、普通の家に家族に憧れているんだ。まさに珠洲のご両親のようなね」

そう言われて、安心する一方で、両親のような夫婦になれるのかという不安が募ってくる。けれど、隣にいる純哉を見るとその不安がいいのだと思うことにした。


~純哉&珠洲side~
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